続・女豹姦宴
〜女豹姦獄 another〜

前夜編




『さぁ!!次なる美女は、はるばる東洋からのエントリー!!ミス・キエラ・リー!!』

 景気の良いコールを合図に、カーテンがサッと左右に割れた。
 ギラつく常夏の陽光を跳ね返すように、カーテンの奥から勢い良く飛び出してきた女に、無数の歓声と口笛がスコールのように降り注ぐ。
 流れ出したBGMを打ち消すほどに、激しくなる一方の歓声と興奮。それらをタップリと満喫するように、テンポの良い足取りでステージ中央へと進んでいく女。
 その相貌は、濃いサングラスと目深に被った船長を思わせるキャプテン帽に覆われ、窺い知ることはできない。だが、妖艶なカーヴを描く唇や、上品に整った顔の輪郭は、女の持つ美貌が類稀なものであることを観客たちに確信させた。
 だが、焦らすように隠された美貌に熱い視線を注いでいるのは、どちらかと言えば少数派だ。観客たちの視線の大半は、太腿も露な白い超ミニのチューブトップワンピースに包まれた、圧倒的量感を誇る肉体に集中していた。
 小麦色に日焼けしたその肢体は、東洋人としては大柄だが、贅肉一つなく見事にシェイプされていることは一目でわかる。
 密着性には乏しいが、光沢十分な白いビニール素材のワンピースは、歩むたびにその表面に極彩色の煌きをまとわせる。女体の悩ましいS字ラインを微妙に隠しつつも、巧みに期待感を盛り立てる絶妙なコスチュームだ。胸元からフロントスリットに至るジッパーを、自身の指で押し下げていく光景を妄想した観客も、一人や二人ではない。
 小気味良い音を立てる白いピンヒールは、キュッと引き締まった脚首からふくらはぎへのラインを緊張させ、長くしなやかな彼女の脚線美を完璧に演出していた。
 そんな彼女が熟れ満ちたヒップを振り立てるようにして歩む姿は、媚びるというより、自らの魅力で観客たちを平伏させてしまいそうな迫力と魅力に満ちている。
 女は、男たちの歓声に応えるように、一気にステージの前縁まで歩み出た。
 一歩また一歩と女が近づいてくるたび、観客たちの興奮が天を破りそうなほどに高まる。思わず、手を伸ばしてしまう者まで出る始末だ。
 だが、女はそんな男たちを嘲笑うように、その手が届く直前でクルリと方向転換し、チロリと舌を覗かせてみせた。―――お生憎さま、わたしはそんなにお安くないの。
 手を伸ばしていた男がバランスを崩してステージに突っ伏し、会場中から笑い声が上がる。
 登場から僅か十秒で、観客たちは完全に彼女の虜となっていた。
 女は、魅惑的に弾むヒップをアピールしながら一旦距離を置いた。そして、ステージ中央で再び観客たちに振り返った時、その両手がサングラスとキャプテン帽を一気に剥ぎ取った。

『ォォオォォォォーーーー!!!!!!!』

 会場全体から奔騰する歓喜の絶叫。
 遂に晒された女の相貌は、それほどの逸品だった。
 彫りの深い端正な美貌は、典雅な気品とゾクゾクするようなセクシーさを併せ持ち、ステージ映えするよう思い切り濃くしたメイクもまったく下品に映らない。それどころか、一目で男を狂わす凄艶さに磨きがかかり、まさに超絶的と評するに相応しい極上の美貌に仕上がっていた。
 このステージに相応しからぬ知性を帯びた瞳に浮かぶ光は、自らの美に裏付けされた完璧な自信だ。その光を浴びる男たちに、無意識下で彼女の支配を受け入れさせてしまうほどの魔力と魔性に満ちている。
 女は、観客たちの驚愕じみた興奮が落ち着くのを見計らうと、リズミカルな足取りで歩み出した。
 先程、これ以上ないほどの“おあずけ”を食った男の目前に歩み寄る。だが、今度は男が手を伸ばすことはなかった。
 嘲笑の的になりたくないという想い以上に、彼女に手を触れてはならない、彼女の意思に従わなければならないという観念が無意識下で埋め込まれ、男をコントロールしたのだ。
 見事な“躾”と呼ぶべきだった。
 女王のそれを思わせる妖艶な微笑を浮かべた女は、支配を受け入れた従順な男に“褒美”を与えた。
 今にも涎を垂らしそうな男の目前で、両手を当てた腰を溜息が出るほどの悩ましさでグラインドさせる。
 音楽に合わせ、ゆっくりと綺麗な脚を折り、熟れ満ちた腰が下がると、超ミニの裾が徐々にずり上がっていく。
 深く切れ込んだフロントスリットから腿の付け根まで晒した小麦色の美脚、そしてスリットの奥からチラチラと危うげに覗く股間の薄闇は、絶景以外の何物でもない。
 更には、そこで鋭くターンをかけ、今度は男に向かって突き出したヒップを右へ左へ悩ましく振り立てる。
 熟れ頃の女にのみ許された豊かな量感と、ギュンと音を立てるような張りを兼ね備えた尻肉。そこには、ピンクで縁取られた白いTバックが激しく食い込んでいた。

『ゥウォォォォォォーーーーーー!!』

 野獣の群れを思わせる、荒ぶった歓声があちこちから噴き上がる。
 だが、それでも女は満足しない。
 悩ましすぎる小麦色の肉体をハイテンポでうねらせつつ、ステージ上を右へ左へと移動する様は、まるで下等なるケダモノたちから更なる興奮を絞り出そうとしているかのようだ。
 やがて、それにも飽きたのか、女はステージの中央に戻った。
 男殺しの凄艶極まりない美貌に挑発的な笑みを浮かべると、その手を超ミニワンピースの胸元に伸ばす。
 これまでとは異なるスローテンポで身体をクネらせながら、ジッパーをゆっくりと下げていく。
 東洋人離れした巨大な乳房の丸々としたシルエットが、贅肉一つなく見事に引き締まったウェストが、圧倒的なボリューム感を誇る尻が、次々に姿を現す。
 身長168センチ、バスト99・9、ウェスト55・5ヒップ88・8の完璧なプロポーションが描き出すデンジャラスカーブは、男どもの視線を一瞬で釘付けにした。
 そんな危険極まりないダイナマイトボディーに食い込んでいるのは、ワンピースタイプとはいえ、スリングショットに分類されるような大胆過激な水着だ。
 腰骨の上にまで達する超ハイレグにTバック。胸元は、ウェストの左右から斜め上方へと伸びる細布だけが危なっかしく覆っている。首の下でクロスするストレッチ素材の細布は、ピッタリと乳房に張り付いていたが、それは乳首周辺の僅かな面積だけであり、力強く上向いた紡錘形の肉球の大半は剥き出しだ。
 これほど大胆な水着になると、身体の方が貧相に見えかねないが、肉感と張りを絶妙な配合で両立した圧巻のプロポーションは、それを完璧に着こなしていた。むしろ、全裸以上のエロティックさでもって周囲を圧倒する。

『オオオォォォォォォーーーー!!』

 ステージにかぶりつく男たちから、これまでで最大の声が上がった。もはや、“声”というより絶叫に近い。
 だが、熱帯ハリケーンのように全身に叩きつけてくる雄獣たちの咆哮にも、女はまったく動じなかった。
 むしろ、それらを楽しみ、弄んでいるかのように、挑発的な微笑はそのままに、大胆過激な極小水着でトッピングされた裸身をシャウトさせてみせる。
 両手を頭上で組み、凶悪な色気を放つ女体のS字曲線を自ら完全に曝け出す。
 豊かな胸を、尻を、クンッ、クンッ、と激しく突き出したかと思えば、今度は溜息が漏れるような悩ましさで柔らかくツイストさせる。
 その力強くも瑞々しい躍動ぶりは、それらが混じりっ気なしの“天然モノ”であることを男たちに思い知らせた。
 露骨極まりない悩殺アピールを受けた男たちのボルテージは、止め処なく駆け上がり続ける。
 だがそんな中、興奮と歓喜の坩堝と化したステージの中央に立つ女、『峰不二子』は冷ややかに思った。

(ホンと―――男って単純よね)





『さぁ、1万ドルの賞金とコンテストクイーンの栄冠は、どの美女の頭上に輝くのか!?
 ―――本年のコンテスト優勝者は、エントリーナンバー14番、キエラ・リー!!』

 絶叫するような司会者のコールと共に、会場全員の視線と歓呼が不二子に向けられた。
 ま、当然の結果ね―――そんな想いはおくびにも出さずに、柔らかな笑みで喜びを表現した不二子は、ズラリと並んだコンテスト参加者の列から一歩前に出た。
 再び高まる歓声。
 不二子は、右に左に片手を挙げ、拍手と口笛を吹き鳴らす観客たちの祝福に応えた。
 頭上に小洒落たクラウンを、肩から『Super Bikini Contest Queen』と書かれサッシュをかけられた不二子に、短パンとアロハ姿の中年男が歩み寄った。
 禿げ上がった前頭部を脂でギラギラと輝かせ、肉のダブついた顔面一杯に笑みを浮かべているこの男こそ、コンテストの主催者だった。
 祝福の抱擁を交わすと、主催者は言った。

「おめでとう。1万ドルは君のものだ、ミス・リー。
 長いことこのコンテストを運営してきたが、君ほどの美女は初めてだよ」
「あら、光栄ですわ。ご高名なミスターにお褒めいただけるなんて」

 抱擁と同時に鼻腔に突き刺さった悪臭と、ブヨブヨと気色悪い贅肉の感触。それらに嘔吐感にも似た不快感を覚えつつも、不二子は美貌に貼り付けた笑みを完璧に維持した。

「お待ちかねの賞金は、この後のパーティーで、私の自宅で授与するから
 楽しみにしてくれたまえ」
「ミスターのお屋敷で!?きっと豪華で素敵なお屋敷なんでしょうね。
 本当、楽しみだわ」

 未だ優勝の興奮冷めやらぬ―――という不二子の積極的な返事に、主催者の顔が醜く笑み崩れた。蛇のそれを思わせる細く、変質的な光をたたえた男の目は、汗とオイルに濡れて扇情的に輝く不二子の裸体を執拗に舐め回している。
 不二子には、主催者の心中が手に取るように分った。
 喰いモノにされるとも知らずに、バカな女だ―――大方、そんな風にでも考えているのだろう。
 その無防備に緩みきった外見とは裏腹に、この主催者こそ、中南米でも有数規模を誇る麻薬カルテルのボスだった。
 毎年、賞金目当てに参加したコンテストの出場者から自分好みの女を選び出し、毒牙にかける―――手下も交えてタップリ輪姦し、クスリ漬けのセックス奴隷に仕立て上げるのだ。
 その事実を、不二子は知っていた。おそらく、男の自宅では、獣欲を持て余した屈強な部下たちまで、手ぐすね引いて待ち構えていることだろう。
 そんな場所に女一人で乗り込むなど、自殺行為そのものだ。
 だが、不二子の切れ長の瞳は、まるで会心の獲物を見つけ出した女豹のように、危険な輝きに彩られていた。





「―――今夜の君は一段と美しい」

 感に堪えぬという口調で、主催者が言った。
 時間は既に深夜に及ぼうとしていた。
 主催者の邸宅で開催されたコンテスト後夜祭も盛りを過ぎ、二人の姿は主催者の寝室にあった。
 広大な敷地を誇る豪邸。その二階の広く取られたテラスに、立つ不二子。
 その姿は、まるでスポットライトが当てられたかのように鮮やかに浮かび上がり、圧倒的な存在感をまとわせていた。
 艶やかにドレスアップした彼女はそれほどまでに美しく、壮麗だった。
 美しい女など見慣れている筈の主催者や参列者ですら、一瞬言葉を失ったほどだ。
 肩と背中を大胆に晒したシルクのロングドレスは、男たちの血で染め上げたような真紅だ。
 その豊満極まりない乳房が作り出す深々とした谷間を、深く切れ込んだ胸元から惜しげもなく披露し、歩く度に大きく割れるサイドスリットからは、優美且つ官能的な曲線を描く美脚を大胆に覗かせている。
 アップにとめた栗色の髪にも、露出した小麦色の肌にも、タップリとラメが振りかけられ、プラチナのネックレスとブレスレッド、そしてアンクレットがその美しい彩に更なる華を添える。
 パーティーに参加した男たちに、“ゴージャス”という言葉の意味を、改めて知らしめたほどだ。
 ビキニコンテストの時に漂わせた、弾けるような瑞々しさやワイルドな雰囲気は影を潜め、それに代わって典雅なほどの秀麗さと、匂い立つような妖艶さをムンムンと発散している。

「気合を入れてきましたもの。こうして―――ミスターと二人っきりになれるかもしれませんし」

 寝室に立ち尽くす主催者に、テラスから上目遣いの視線を向ける不二子。
 放たれる言葉にも視線にも、滴るように濃厚な誘惑の色がある。
 それを敏感に感じ取った主催者の顔が醜く崩れた。

「気合を入れてきましたもの。こうして―――ミスターと二人っきりになれるかもしれませんし」

 寝室に立ち尽くす主催者に、テラスから上目遣いの視線を向ける不二子。
 放たれる言葉にも視線にも、滴るように濃厚な誘惑の色がある。
 それを敏感に感じ取った主催者の顔が醜く崩れた。

 ヘッ、お高くとまってみせても、所詮は下心一杯のメス猫だったか。
 カラダ担保にオレに取り入り、愛人の地位でも得ようと考えているんだろう。
 だがな、オレは愛人なんざ興味はねぇんだ。
 高望みの代償に、ご自慢のカラダをシャブ漬けにしてタップリ輪姦してやる。
 泣こうが喚こうが、もう手遅れだ。
 そのデカいチチもケツも徹底的に犯し抜いてやるぜ・・・・・・。

 主催者は、自らを待つ運命など知らずにカラダを差し出そうとしている美女を、生唾をすすりながら、獣のような視線で舐め回した。
 コンテスト主催者という紳士の仮面が音を立てて剥がれ落ち、凶悪で残酷な麻薬カルテルのボスの顔が現す。
 次に口を開いた時、その言葉遣いまでもがガラリと変わっていた。

「なら話は早い。お前はオレに何を望むんだ?
 愛人の地位か?金か?それとも豪勢な暮らしか?
 お前は確かにイイ女だ。態度次第で考えてやってもいいんだぜ」
「態度?」
「分ってんだろ。気取ってないで、さっさとオレに奉仕しろ、って言ってんだ」

 コンテストやパーティーで、絶対不可侵の女神とまで思わせた美女。そんな女に、圧倒的優位をバックに淫らな命令を下すことができる―――男ならば誰でも夢見るたまらない興奮に、主催者の心と体が震えた。

「フフッ・・・・・・せっかちね」

 今にもこちらに飛び掛ってきそうな主催者を焦らすように、ゆっくりと室内に入り込む不二子。
 開かれていた窓を、厚いカーテンを閉じる。

「グズグズするな。さっさとこっちへ来い」

 すっかり主人気取りの主催者は、早くもタキシードのズボンを脱ぎ捨て、部屋の中央に仁王立ちしていた。
 その曝け出した股間には、ギンギンにいきり立った男根が、不二子を睨んでいる。

「跪け。咥えろ、売女」

 言われるがまま主催者の前で、その優美で長い脚を折って跪く不二子。
 美しすぎる女を口汚く罵る背徳感に、主催者の心が痺れる。
 大きく割れ乱れたスリットから剥き出された肉感的な太腿、深いカットの胸元から覗く深い美巨乳の谷間、そして、グロテスクな肉塊を咥えるべく開かれたセクシーな唇。
 どれを取っても、絶景と評するほかない光景だ。
 真っ赤なルージュにグロスを重ねた唇がドス黒い男根に近づく。その朱唇が奏でるであろう甘美極まりない極上メロディーを予感し、堪らなくなった主催者は、思わず天を仰いで目を閉じた。
 だが―――いつまで経っても、主催者が待ちわびる歓喜の刻は訪れなかった。

「なにしてやがる!!さっさと―――」

 大きすぎる期待が不条理な怒りに転じた。だが、荒げた主催者の声は、その途中で凍りついたように途切れてしまう。
 気がつくと、氷のような冷たさをたたえた切れ長の瞳が、長い睫毛の向こうから無感情に主催者を見据えていた。

「さっさと―――なに?」

 まるで、クリスタルグラスを弾いたような、鋭利で硬質な声。そこに潜んだ危険さに、主催者の体が硬直する。

「このわたしが、こんな不潔でみすぼらしいモノを口にすると思って?
 とんだお笑い種だわ」

 嘲笑と同時に、不二子の身体が閃光を発するような鋭さで動いた。
 次の瞬間、主催者の体二箇所から、間欠泉のように鮮血が噴き出す。
 丹念にネイルアートを施した付け爪。硬化処置を施すことでナイフのような鋭利さを与えられたそれが、主催者の首と下腹部を同時に切り裂いたのだ。
 素早く身を翻し、熱い返り血を避けた不二子。
 その視界の隅で、失血性ショックによって一瞬で絶命した主催者が声も立てずに崩れ倒れる。

「あなたに恨みはないけど・・・・・・悪いわね・・・・・・」

 そう呟く不二子の小麦色の美貌には、先程見せた嘲笑は微塵も残っていなかった。
 そこには、喩えようのない虚無感だけが浮かんでいた・・・・・・。





 暗い回廊に、コツコツというピンヒールの音が響いた。
 不二子の進む先には、巨大な木製の扉があり、二人の黒スーツが待機している。
 金属探知機によるチェックを受けると、彼女は中に入るよう促された。
 ホールのような室内は広い上に薄暗く、天井も壁も目にすることができない。
 唯一目にすることができるのは、真正面に位置する玉座を思わせる高い台座だけだ。
 そこには、悠然と足を組む巨大で黒々としたシルエットが見えた。

「戻ったか、不二子」

 “玉座”から野太い声が発せられた。
 だが、挑発的なフラッシュカラーのボディコンを身にまとい、戦闘的とすら評せるほどの空気を発散している不二子は無言のままだ。
 既に彼女は、コンテスト参加にあたって身体に塗りつけたサンタンローションを落とし、眩いばかりの純白の素肌を取り戻している。

「で、首尾は?」

 その言葉に、不二子が始めて反応を示した。
 ハンドバックから取り出したモノを、切り裂くような手つきで玉座の前に投げつける。

「さすがは峰不二子。暗殺者としても超一流だな」

 目前に投げ出されたモノにも、声の主はまったく動揺しなかった。
 それは、ビニール容器で真空パッキングされた―――殺害した主催者の“耳”だった。

「いつまでこんなことを続けさせるつもり?
 わたしは殺し屋じゃないのよ」

 そう言って声の主を睨み付ける不二子。その瞳には、明白な殺意すら漂っている。


 だが相手は、分厚く“硬い”面の皮で彼女の視線を跳ね返すと、嘲笑でもって、それに応えた。

「そうだ、確かにお前は殺し屋ではない。
 お前は儂の“奴隷”―――Mr.Xのセックス奴隷だからな」
 部屋一杯に響き渡る豪快な笑い。
 ようやく薄闇に慣れた不二子の瞳が、シルエットのディティールを捉えた。
 隆々とした筋肉の盛り上がりを全身にまとわせた2メートルを遥かに超える大男。
 ありえないことに、その巨大極まる肉体は、頭の先から爪先まで、濡れた金属のような妖しい輝きを帯びていた。
 その男こそ、業火のように燃え上がった復讐の念を、肉体改造という荒業によって『超人化』したMr.Xだった。



 ―――Mr.Xによって豪華客船『サーロイン号』におびき寄せられた不二子。
 抵抗空しく囚われの身となった彼女は、かつての復讐に燃える犯罪組織スコーピオンの総帥・ミスターXの仕組んだ壮大なる陵辱ショー―――その出し物として優美な肢体を満場の来客の前に引き出された。
 薬物と淫靡な責めの連続に打ちひしがれ、無残にも淫らな屈服を繰り返してしまった彼女は、その美しさ故の気高き矜りの最後の一片まで剥ぎ取られ、徹底的に犯し抜かれた。
 勝気で鳴らした女豹の気性も、女王のように輝く高貴さも、プライドまでもズタズタに打ち砕かれ、最後は超人化したXのドリル男根によって責め嬲られた。
 淫靡に乱れ崩れた美貌を観客たちに晒し、肉悦に負けて何度も屈服の言葉を搾り取られた末に、Mr.Xの奴隷として、完全に飼い馴らされてしまったのである。
 もちろんそれで、彼女の淫獄が終わったわけではない。むしろ、始まりにすぎなかった。
 不二子は、『サーロイン号』に招かれた賓客たちに与える高級娼婦として、朝も昼も夜も、その心と身体を喰いモノにされた。
 裏社会において燦然と輝く『孤高の女盗賊・峰不二子』というブランドそのものが、彼女には災いした。札付きのワル揃いの賓客たちは、伝説のSEXシンボル『峰不二子』の全てを晒し、陵辱し、屈服させようと、淫惨なレイプと性拷問を加え続けた。
 そのままいけば、肉体が限界に達して絶命するか、精神が破綻をきたし廃人になるか、二つに一つだったことだろう。
 だが、ある事件が彼女の運命を大きく変えた。
 当時、Xは、別の犯罪組織を併合しようと画策していた。だが、件の組織首領は頑としてそれを認めず、それどころかスコーピオンに敵対する別組織への接近を図ったのである。
 これに激怒したXは、目障りな組織首領を暗殺しようとした。だが、彼が送り込んだ暗殺者は、ことごとく返討ちにあう始末だった。
 そこで、新たな暗殺者として白羽の矢が立てられたのが不二子だった。
 暗殺対象である組織首領は、部類の女好きとして知られていた。
 極上の美貌と肉体を併せ持ち、諜報能力においても戦闘能力においても類稀な才覚を持つ不二子であれば、第一級の暗殺者になりえる。
 問題は、ようやく捕えた不二子を再び外界に解き放つことで生じる、逃亡や逆襲のリスクをどう回避するかだが―――。
 それを解決したのは、スコーピオン研究部門が開発した新種の合成ウィルスだった。
 このウィルスは脳細胞に作用することで、接種当初は記憶力や思考能力が著しく向上する。しかし、一定期間が経過すると、脳細胞が異常活性を始め、頭痛や嘔吐といった肉体異常ばかりか、最後には発狂死に至る殺人ウィルスだった。
 ウィルスを植え付けられた人間は、二週間に一度、ワクチンを接種することで、ウィルスの増殖を抑えなければならない。元々は、スコーピオン研究開発部門に属する科学者の造反防止、機密保持のために開発されたものだ。
 このウィルスを植え付けられた不二子は、Xの命令を実行するために、初めて表の世界に戻ることが許された。だが、二週間以内に命令を実行し、スコーピオンの本拠たるサーロイン号に戻らなければならなかった。
 ワクチンは、“成功報酬”として、Xから直接不二子に与えられることになっていた。
 万が一、不二子が暗殺に失敗したり、逃亡するなどで、サーロイン号に帰還しなかった時には、無残な発狂死が彼女を待っている。
 こうして、危険極まりない女豹の首に、見えない首輪と鎖が戒められた。
 その首輪は、時間と共に確実に彼女の首を締め上げ、最後には括り殺してしまう絶対の服従装置だった。



「正直、お前には感心したぞ。
 ただ美しいだけの女なら、一ヶ月もすれば飽きもする。
 だがお前は―――」
「女は、秘密を隠し持っている方が魅力的、でしょ?」

 その首にかけられた無色透明の存在などまったく気にもかけない様子で、不二子は真っ直ぐにXの目を見つめた。

「クックック、なるほど。お前らしい言い草だ。
 だが、その口の利き方は気に入らんな。
 お前の立場は何か、お前の飼い主は誰か、この二週間ですっかり忘れ果てたかのように見える。」

 それまで、一点の曇りもない瞳でXを見据えていた不二子に、初めて動揺が走った。
 恫喝じみたXの言葉に反応したのではない。彼が手にしたモノの存在に気付いたのだ。

「そんなこと・・・・・・ないわ」

 不二子の視線が、Xが手にした小さなガラス容器に奪われる。
 そのあまりに巨大な手が容器を弄ぶと、今にも砕け散ってしまいそうな危うさがある。

「そうかな?
 表の世界にあてられ、真の主人のことなど綺麗さっぱり忘れ果てたのではないのか?」

 そう言って、ガラス容器を目線の高さまで持ち上げたXは、容器越しにニヤリと特殊金属製の顔面を崩してみせた。
 Xが手にしているものこそ、不二子に植え付けられたウィルスの活性を押えるワクチンだった。

「そういえば―――今朝カリフォルニアで大きな事故があったことを知っているか?」
「え?」
「20台の玉突き事故でな、ハイウェイでタンクローリーが派手に爆発し、死傷者数もはっきりしていない」

 不意に、Xの傍らに映像が浮かび上がった。立体ホログラフィーだ。
 CNNのロゴがあるところをみると、ニュース映像らしい。
 画面下に、現在までに判明している死者の名前がテロップとして流れている。
 そこに、不二子は見覚えのある名前を見つけた。

「こ、これは・・・・・・」
「覚えておくことだ。この世は不条理に満ちている。
 将来を嘱望されたUSAMRIDの若手研究員。
 女癖は悪いが、世界中を飛び回る行動力とワクチン開発技術は高く評価されている。
 3年前のナイロビか?お前がベッドを共にしたのは。
 そんな男も―――“事故”で呆気なく死ぬ」
「くっ・・・・・・」

 不二子は、僅かに赤味を増した貌を隠すように俯かせ、朱唇を噛んだ。
 テロップに名前の出た男、USAMRID―米国陸軍感染病医学研究所―研究員であるその男に、不二子は自分の血液サンプルを送っていたのだ。
 もちろんその目的は、自らに植え付けられたウィルスの解析と、ワクチンの開発依頼だった。

―――読まれていた。また、なにもかも―――

 かつて一夜を共にした男の死以上に、その事実が不二子を打ちのめした。

「お前は儂から逃げられん。
 未来永劫、儂の奴隷として、手駒として、死ぬまで働いてもらう。
 ―――言ってみろ。お前は何だ?」
「わ・わたしは・・・・・・」

 言いよどむ不二子。
 未だショックが残るその内心で、抵抗しても無駄だという諦観が急速に彼女を侵蝕し、抗おうとする気概が嘘のように萎え果てていく。
 これまで、彼女は何度もXに抗い、その都度無慈悲に叩き潰されてきた。
 抵抗を揉み潰された不二子を待っているのは、お定まりのレイプ。そして、神経を焼き切られるような悪辣な拷問の数々だった。
 不二子の脳裏に、禍々しい悪夢の記憶が蘇る――――。

 ―――悪夢の中で、宙吊りにされた彼女は、肉体を串刺しにされていた。
 後ろ髪を手綱のように引き絞られ、仰ぐように天を向いた唇。そして吊り上げられ、開脚によって無防備化した肛門。それらに、極太の電極棒が捻じ込まれていたのだ。
 そして始まる通電。
 ツボを心得た拷問吏は、彼女を殺すことも失神させることもないぎりぎりの電圧と通電時間で彼女を責め立てた。
 またある時は、強烈な掻痒効果を持つ薬剤を敏感な粘膜に塗り込められ、1日以上漫然と放置された。拘束台に大の字に固定され、決して外的刺激を受けぬよう工夫された状態でだ。
 そして、最も不二子を苦しめたのが、くすぐり責めだった。
 視覚と聴覚が奪われ、予想も備えもできない身体に群がってくる拷問吏の手と指は、どんな毒性害虫よりも恐ろしい恐怖そのものだった。
 眠ることも、休むことも、食すことも、飲むことすら許されず、呼吸すら満足に行えない姿勢で加えられた数々の悪辣な拷問。
 疲労の極みに達した肉体から、全ての感覚が消えうせても、拷問は終わらなかった。
 破断界寸前の肉体を薬物によって強制的に覚醒させられ、人工的に研ぎ澄まされた感覚に、激痛以上の刺激が機械的に流し込まれる。
 体力が失われると精神力が、精神力が失われると理性が、ドミノ倒しのように崩壊していった。
 最初は抵抗の意志を見せた不二子も、最後には甲高い悲鳴を上げて狂ったように悶絶し、血涙と共に哀訴の言葉を何度も絞り出された。
 拷問吏らの目的は、不二子から何かを絞り出すのではなく、その心に『屈服』の二文字を焼き付けることだった。
 そして、永遠に続くようにも思われた拷問が終わると、入れ替わるようにMr.Xが現れた。
 Xは、もはや自分の力では立つことすら叶わないほど消耗した不二子を、乱暴一辺倒の荒々しさで犯した。
 それは、もはやSEXでもRAPEでもなく、強き者が弱き者を喰らう捕食行為でしかなかった。
 まるで、乱雑な子供に扱われる意志のない玩具のように、無抵抗の不二子は様々な体位で組み敷かれ、ありとあらゆる肉穴を貫かれた。
 その際、彼女に一切の拘束は施されなかった。
 心身共に衰弱し切った拷問後の彼女は、抵抗や反発といった意志も感情すら失っていた。いや、自らそれらを放棄したと言っても過言ではない。
 不二子に拘束が施されなかった理由、それはMr.Xが『峰不二子』という稀代の女盗賊を我が物としたという高らかな勝利宣言であり、気高き女豹が諦観と共に『飼われる』立場を受け入れた何よりの証明であった。
 もちろん、拷問からもXからも解放され、泥のような眠りにつくと、彼女の意志はある程度回復した。
 今度こそ、必ず逃げ出してやる。そして、Xを―――必ず殺す。
 目覚めるたび、そんな決意を新たにしながらも、不二子は内心のどこかで、自分が確実に変わりつつあることを感じていた。

 何故、わたしはココから逃げなければならないのか?
 このまま飼われ、愛奴として生きるほうが、安逸に生きていけるのではないのか?

 そんな想いに気付く度、不二子は強く首を横に振ってきた。

 わたしは峰不二子。
 生きるべきは、男の風下ではなく、風上でなければならない。
 だが・・・・・・時には、男を欺くため、従順なフリを見せるのも必要だ・・・・・・。

 欺いている相手が、Xなのか自分自身なのか、不二子にも分らなくなっていた。

「わたしは・・・・・・ど、奴隷・・・・・・です」

 俯いたまま、軋るように絞り出す不二子。
 これまで何度も口にさせられた台詞とはいえ、全身に流れる女豹の血は、屈辱で煮えたぎっている。
 だが最後には、Xの調教によって馴らされた諦観が勝った。

「奴隷たるお前の主は?」
「わたし、の・・・・・・主人は・・・・・・Mr.X・・・・・・さま・・・・・・」

 決定的な一言を口にした時、真っ赤なルージュが引かれた唇は震え、ボディコンに包まれた全身は戦慄いた。

「そうだ、それを決して忘れるな。
 だが、そこにそうして突っ立っているのが、主人に対する奴隷の態度か?」
「・・・・・・はい」

 ピンヒールにフラッシュカラーのボディコン、大きくウェーブをかけた栗色髪と扇情的なメイク。どれをとっても挑発的に着飾った美麗女が、Xに向かって歩み寄っていく。
 俯いた瞳に、先程までの挑みかかるような勝気さはない。
 出口のない無間地獄に陥った自らの運命を呪いつつも、それに抗う牙も爪も引き抜かれ、首輪と鎖で飼い馴らされてしまった女豹の目だった。





「おらっ、どうした?もうギブアップか、不二子」
「あっ!!ひィ!!ヒンっ!!ひぃぃぃぃ!!!!!!!!」

 激しく突き上げられるカラダ。煽られるココロ。
 玉座のXに抱きかかえられ、対面座位の姿勢で貫かれている不二子。
 カッと見開かれた瞳からは涙がこぼれ、天を向いて絶叫を繰り返す唇からは、糸を引いた涎が飛び散る。
 抗うことも、耐えることもできなかった。
 鋼鉄製の巨大な剛槍は不二子の柔らかい媚肉を貫通し、その先端は優に子宮口にまで届いている。
 派手なボディコンを身に着けた肢体が暴力的に跳ね上げられる度、胸元からまろび出た美巨乳が激しく踊り、愛液を垂れ流す子宮が叩き砕かれんばかりに打ち据えられる。
 女体の最深部で立て続けにスパークする膨大な快感は、あっという間に彼女を紅蓮の淫炎で焼き尽くした。
 液体金属の制御によって巨大にも異形にも自在に変化することができるXの擬似男根は、捕われた当初こそ薬物を使われなければ嫌悪と苦痛しか感じることができなかったが、長期の虜囚生活によって今では完全に馴染み、無慈悲で凶悪な快楽発生装置と化していた。
 そのゴージャスな肉体には小ぶりで、清楚さすら漂わせていた不二子のヴァギナも、今や淫核と肉ビラがイヤらしく発達し、その色合いも確実に赤味を増している。
 だが、そうした変化は下品にも不潔にも繋がらず、むしろ熟れ咲いた艶華を感じさせた。
 そんな女の秘所が極太の金属性男根をブチ込まれ、無残に引き攣り、涙代わりの愛液を吹き溢している様は、圧倒的な被虐美に満ちている。
 無慈悲に陵辱されているはずの美女の唇から、苦痛を上回る快楽の情感が滲み出しているとなれば、なおのことだ。
 もはや不二子に、快楽と苦痛の差は僅かなものでしかなく、与えられた外的刺激の大半を、自らの淫情を燃え上がらせる魔悦の要素として消化するようになっていた。

「随分と可愛く鳴くようになったものだ。
 お前が袖にした男どもがこの姿を見れば、悔し泣きするだろうて・・・」
「あっ!!あんんっ!!い、言わない、でっ!!」

 精密機械そのものの正確さと野獣じみた激しさで、逞しい腰を突き上げつつも、Xは息一つ切らすことはない。
 かつては仇敵と忌み嫌った美女が、自らの腰の上で淫靡なダンスを強制される様を鑑賞し、言葉で嬲る余裕すらある。

「言わないで?また言葉遣いが乱れてきたか。
 仕置きが必要だな」

 Xの手が、身も世もなく悶え狂う不二子の背後に回った。
 その指先が、まるでイソギンチャクのように収縮と弛緩を繰り返す小さな蕾をまともに捉えた。

「あッ!?クゥゥゥゥ!!」

 その瞬間、既に息も絶え絶えに見えた不二子の反応が激変した。
 汗に塗れた背中が弓なりにしなり、瞳がグルンと裏返って白目を剥く。プルプルと淫靡に震えていた豊満なヒップがギュンと引き攣って跳ね上がる。
 それほどまでに、後孔を弄られる魔悦は強烈だった。
 高級娼婦として取らされた変態揃いの客たちや、X自身の手で開発されたアヌスの感度は、もはや秘唇や乳首に勝るとも劣らない。
 いやむしろ、排泄器官を弄ばれているという背徳感が、精神的な快楽倍増要素として肉体に作用し、極彩色の淫感波動を撒き散らす。

「はんっ!!あっ!!あんんんっ!!や・やめてぇぇぇ!!」

 首をブンブンと左右に振り立て、無垢な少女のように泣き喚く不二子。
 本来、SEXには無縁の最も密やかな器官を弄られる屈辱、そしてそれ以上に、そんな部分を弄られても快感を覚えてしまう自分自身に対する恥辱
 激しすぎる混乱が聡明なはずの彼女の思考を蝕み、貌を上げることもできないまま、ひたすら許しを請うといった幼稚な反応しか示すことができない。
 だが、この数ヶ月間に性感を徹底的に開発され、もはや“マゾ”と言っても過言ではないレベルにまで調教された不二子の肉体は、狂い出しそうな本人の感情とは裏腹に、新たな被虐に期待感すら覚えている。

「“普通”の指では不満か。
 そうか、お前が好きなのは“コレ”だったな」

 後孔に深々と突きこまれたXの指が急速に変異していく。
 長さが増し、一本の指には二つしかない筈の間接の膨らみが、一挙に十数個の瘤の連なりに増殖・変形したのだ。

「ヒッ!?い、いやっ!!」

 その変貌を直腸内で生々しく感じ取り、不二子の全身が総毛立つ。
 その責めは、最も彼女の苦手とするものであった。

「どれ、揉み解してやろう・・・・・・」

 ロデオマシンのような激しい腰の躍動はそのままに、異形化したXの指がゆっくりと動き始めた。
 排泄のために存在する一方通行の肉穴は、逆方向からの無法な侵入に、反射的に固く強張っていた。だが、それも長くは続かない。
 指が引かれ始めると、無数の瘤が持つ球状曲面一つ一つが、揉み解すような絶妙なタッチで、引き攣るアヌスをジワリジワリと陰湿に捲り上げていく。

「あっ!ひっ!ヒィッ!!ヒィィィ!!」

 狂したように金切り声を上げるグラマラスボディーが、乳を震わせ、汗を振り飛ばしながらガクガクと戦慄いた。
 丸々とした瘤を一つ、また一つと引き出される度、気死してしまいそうなほどの凄まじい快感が背筋を駆け上がって脳を焼く。
 同じ異形化された指でも、挿入される時にはこれほどの感覚は覚えない。だが、引き抜かれる時には、他のどんな責めも稚戯に思えるほどの激情が噴き上がってくるのだ。
 アナルボールと化した指を出し入れすればするほど、尻穴が発する快楽に、我を忘れたかのようにヨガリ狂う不二子。
 Xはニヤリと笑うと、半分ほどまで抜いていた指を、一気にズリュッと引き抜いた。

「ンあっ!!アァァァァッ!!」
―――ブシュッッッッッ!!―――

 パックリと割れてXの擬似男根を咥え込むビショ濡れの股間から、激しく潮が噴き上げた。
 同時に、限界まで仰け反った身体がブルブルッと震え、続いてガックリと崩れ落ちるようにしてXに寄りかかる。
 彼女が排泄器官を襲った淫激によって一瞬で絶頂に至ったのは、火を見るより明らかだった。

「クックック・・・・・・尻穴マゾ奴隷・峰不二子か。
 それもすっかり板についてきたようだな」

 自らが淫獄の虜囚へと貶めた女を見下ろしたXが満足げに呟いた。
 だが、見下ろされた女は、言い返すことも睨み付けることもないまま、憎んでもあまりまる仇敵に力なく身を預けている。
 荒い呼吸を繰り返し、グッショリと汗にまみれた額に乱れきった髪を貼り付けた美貌は、望まぬ快楽に蕩かされた女の悲哀と淫靡さを強烈に発散している。
 それが、再びXの欲情を誘った。

「主人がまだ満足しておらんというのに、奴隷が先に休むつもりか?」

 乱暴に突き放され、受身も取れないまま、うつ伏せに倒れる不二子。
 床に強打した激痛に、恍惚としていた意識がようやく覚醒するが、そこに巨大な影が差した。
 ゆるゆると貌だけで振り返った不二子が、恐怖と衝撃に蒼ざめる。
 仁王立ちするXの股間に凶器のようにそそり立った擬似男根。
 先程まで彼女の媚裂を割り裂いていたものとは明らかに異なる。
 その形状は、不二子を一瞬でオルガズムに導いたXの指に酷使していた。しかし、その大きさも太さも、軽く3倍を超えている。
 その形を見ただけで、不二子はXが何を犯そうとしているのか直感的に悟った。

「お、お尻ッ!お尻はイヤッ!!も、もう許してッ!!」

 逃げ出そうと立ち上がりかけた脚が、腰が、ガクンと床に落ちた。
 どれほど屈強なボディービルダーでも絶対に叶わないXの怪力で、3時間以上に渡って好き放題弄ばれた不二子。そんな彼女に、もはや立ち上がる力など残っている筈もなかった。
 しかも、その豊かに熟れ満ちた腰の奥底には、未だ消えきらない官能の余韻すら燻っているのだ。
 だが、それでも不二子は、諦めなかった。唯一自由が利く両手で床を掻き、這うようにXから遠ざかろうとする。
 しかしそれは、無力な生贄を弄ぼうとするXの嗜虐心と征服欲をかき立てることにしかならなかった。
 1メートルも逃げることができないまま、超ミニボディコンがすっかり捲れ上がって丸出しのヒップが、ガッチリと掴まれた。

(・・・・・・また・・・・・・また犯されてしまう・・・・・・)

 不二子は、逃れようのない自らの運命を絶望と共に悟った。
 か細い抵抗も空しく、鷲掴みにされた尻が高々と持ち上げられる。
 乳も尻も丸出しに乱れ果てたフラッシュカラーのボディコンと、彼女自身の汗と愛液のテカりで艶かしく彩られた極上の肉体。それが尻立て四つん這いを強要され、そこに覆い被さるようにXがのしかかってくる。

「うっ!!あぐうううゥゥゥゥ!!」

 菊門がメリメリと悲鳴を上げ、全身が断末魔の痙攣に打ち震える。
 だが、狭小な肉門は裂けることも血を噴くこともなく、その暴虐に耐えた。

「ほぅ、丸々呑み込むとは、ココもすっかり開発されたようだな」

 勝ち誇るXの声が、背後から聞こえる。
 だが、あまりの激痛に吐き気すら催している今の不二子に、反芻できるような余裕などなかった。
 しかも、本当の地獄はこれから始まるのだ。
 今は苦痛に戦慄いている肉体も、無数の瘤をたたえたXの異形男根が抜き差しを始めれば、あっという間に悦楽に呑み込まれてしまうだろう。
 敏感極まりない泣き所と化した尻穴を徹底的に責め嬲られ、立て続けの絶頂の果てに、唇から泡を吹くほど淫欲にヨガリ狂う様まで、不二子には簡単に予想できた。
 それでも不二子は、ほんの僅かでも晒す痴態を減らそうと、床に爪を立て、力の入らない四肢を突っ張った。
 木っ端微塵に打ち砕かれてもなお残る、孤高の女盗賊としてのプライドの残滓が、彼女にそれを命じているのだ。

「さて・・・・・・また恥を晒してもらおうか。今度は・・・・・・その汚らわしいケツの穴でな」

 今の不二子は牙と爪を抜かれた女豹―――Xの暴虐とパワフルな性技に屈し、恐怖に震える無力な女―――にすぎなかった。
 荒れ狂う淫欲に翻弄され、その場に留まることも、引き返すこともできないまま、奈落の底へと真っ逆さまに堕ちていくのは確実な未来だ。
 そして数秒後―――未来は現実と化した。獣のような咆哮と、咽び泣きと共に・・・・・・。





 重厚なドアが細く開き、そこから危なげな足取りで人影が現れた。
 入室時にいた黒スーツ二人の姿はない。
 彼らはXのボディーガードであり、Xと共に姿を消したのだろう。
 丸半日以上嬲られ続け、ようやく不二子はXから解放されたのだった。
 今やクリトリスやヴァギナ以上の感度を持つようになった尻穴を、偏執的ともいえる執拗さで責め立てられ、最後の1時間ほどは完全に失神した状態だった。
 半ば昏睡状態のような眠りから醒めると、そこにXの姿はもうなかった。彼女の様々な体液で汚れた床には、一本のアンプル瓶と次なる指令の資料だけが残されていた。
 不二子は資料を無視すると、震える手でアンプルを取り、自らにそれを注入した。すると、ウィルスの異常活性に伴い常態化した頭痛が、嘘のように消えていく。

(これで・・・・・・また二週間・・・・・・)

 命を繋いだ―――そんな生の実感がゆっくりと彼女を満たしていく。
 だが、そんな至福にも似た時間は長くは続かなかった。それに代わって、喩えようのない惨めな敗北感がジワジワと込み上げてきた。
 こんなアンプル一本のために、わたしは命をかけて指令を果たし、しかも性の奴隷として、肉体まで差し出さなければならないのか。こんな―――アンプル一本のために。
 腕に力がこもり、用済みになった空のアンプル瓶を粉々に握り砕いた。
 手の皮が破れ、一条の鮮血が細い糸となって流れ落ちる。
 今の不二子には、自らを律するための“痛み”が必要だった。快楽に溺れ、精も魂も萎え果てた自分自身を鼓舞するために。

 不二子とて、この呪わしい現状に甘んじているわけではない。
 命ぜられる数々の困難な指令を完遂してきた彼女は、Xのセックス奴隷であると同時に、スコーピオンにおいて確固たる地位を得るまでなっていた。
 以前であれば、Xに犯された後、手下たちに下賜され、輪姦されるのが常であった。しかし今では、不二子に触れることができるのはXだけであり、このサーロイン号においても、専用の個室を与えられるまでになっていた。
 Xは好色であったが、無能ではなかった。それどころか、巨大組織の長として、人並み以上の組織管理・運営能力を持っていた。
 どんな男をも虜にする類稀な美貌と肉体を併せ持ち、潜入や暗殺といった特殊技能まで備えた不二子を、他に代えられない手下として、評価するようになっていたのである。
 性奴隷にして凄腕の工作員、そんな不可思議ともいえる立場を活かし、不二子はワクチンの製法と製造場所を特定しようと何度となく試みていた。
 しかし、調査の結果は惨憺たるものだった。
 アンプルは、Xが直轄する秘密研究所において製造されていた。もちろんその場所は、サーロイン号ではなく、組成や製法についてのデーターも船内には存在しなかった。
 また、アンプルは研究所から不定期に飛来するヘリが、空中投下でサーロイン号に届ける手筈であり、ヘリを乗っ取ることも尾行することも難しかった。
 だが、不二子は諦めてはいなかった。
 彼女が指令をこなせばこなすほど、Xの信頼は増し、不二子に対するガードも下がることだろう。
 その時こそ、脱出と逆襲のチャンスが訪れるのだ。
 それまでは―――たとえ草の根を噛んででも耐え抜いてやる。

 大きく一つ深呼吸すると、不二子はその場に立ち上がった。
 考えられる限りの様々な体位で犯された肉体は消耗し尽くし、嬲られ続けたヴァギナと尻穴は、火を噴いたような激痛を放ち続けている。
 だが、不二子は歯を食い縛り、声一つ立てることなく、真っ直ぐに立った。
 腹巻のように丸まったボディコンを元に戻し、荒れ放題の髪を指でとかす。汗と涙で無残に剥がれたメイクばかりは我慢するしかないが、なんとか人前に出られる姿になった。
 Xからの指令とその資料を挟んだクリアーファイルを手に、不二子は一人きり残された部屋を出た。





「戻って早々、朝帰りとは、ご苦労なこった」

 あちこち痛む躯を気遣いながら自室へ向かう不二子に、背後から甲高い男の声がかけられた。
 不二子は、一瞬だけ背後を振り返ったものの、そのまま何事も無かったかのように再び歩き出した。
 だが、そんな態度が男の怒りを買った。

「おい!!無視しようってのか!!
 けっ、お高くとまりやがって。
 誰にでもケツを振るセックス奴隷の分際でよぉ!!」

 遠ざかりかけた不二子の脚がピタリと止まった。
 そんな彼女の背中に、甲高い声が更なる追い討ちをかけた。

「気に障ったかぁ?けど、事実だろ?
 ついさっきまでボスに跨ってアンアン鳴いてたんだろうが」

 不二子がゆっくりと声の主に振り返った。

(普段なら無視するところだけど、今日のわたしは機嫌が悪いの。
 それも、最高に)

 不二子の危険な想いも知らぬまま、男は調子に乗って更に続けた。
 その態度も、言葉も、まるで無分別に吠え立てる野良犬を思わせた。

「へへへ・・・・・・その様子じゃ、タップリ可愛がってもらったみたいだな。
 どうだ?何ならオレが、“優しく”慰めてやってもいいんだぜ」

 不二子の視線の先には、声の主である男の姿がある。
 女性としては長身であり、ピンヒールまで履いた不二子が簡単に見下ろすことができる男は、身長160センチにも満たない小男だった。
 その手足は老人のように痩せこけているが、頭だけは異常に大きく、今にも眼球が飛び出さんばかりにギョロついた目が、せわしなく動き回っている。
 不健康極まりないことを示す土気色の肌といい、その外見といい、不二子は、男を有名な宇宙人にひっかけ、『グレイ』と渾名していた。
 『グレイ』は、スコーピオンの財務会計を任されている男だ。
 基本的に武闘派暴力組織であるスコーピオンは、下っ端であれ幹部であれ、肉体自慢の男が多かった。事実、これまで不二子をレイプした幹部たちも、例外なく屈強な肉体を持つ“筋肉バカ”ばかりだった。
 そんな組織の中で、グレイは例外中の例外だった。
 本人曰く、『オレのような頭脳派がいるからこそ、スコーピオンはここまで組織を巨大化できたのだ』ということになる。
 だが、不二子との係りにおいて、グレイは当初からツイていなかった。
 不二子がXに囚われた時も、その後、Xの部下や招待客たちから被虐の限りを尽くされていた時も、グレイは遠くロシアに派遣されていた。
 裏社会のSEXシンボルたる不二子の極上の肉体を想像し、自らの妄想に舌舐めずりしながら、待ちに待った『サーロイン号』への帰還を果たしたグレイ。
 しかし、その時には状況は一変していた。
 次々に命ぜられる困難な指令を完璧にこなす凄腕の工作員として、不二子はXから高く評価されるようになっていた。そんな彼女に、Xは手下たちが触れることを全面的に禁じてしまったのである。
 その厳命の裏にあったのは、独占欲でもなんでもなく、怪力自慢の部下たちが、不二子への責めに熱中するあまり、彼女に回復不能の怪我や傷を残してしまう可能性を恐れたのだ。
 そんな状況で帰還したグレイは、あらゆる意味で不運だった。
 いつもは小バカにしている肉体自慢の幹部たちが不二子のカラダをタップリ満喫したというのに、スコーピオン随一の頭脳を持つはずの自分が、指一本触れられない。
 狂うような嫉妬と怒りを感じたグレイは、何度もXに、不二子を下賜してくれるよう頼み込んだ。
 だが、それに対するXの返事は素っ気無いものだった。

 スコーピオンは鉄の規律で支配されなければならない。
 トップたる儂の命令は絶対だ。例外はない。

 深い失意と共にXの前を辞したグレイの小さな土気色の拳は、ブルブルと震えていたという。
 だが、そんな不二子に対する病的なまでの執心を隠そうともしないグレイには、組織の金を着服しているという黒い噂があった。そう遠くない将来、Xの粛清対象となるであろうことも彼女の耳に届いている。

(なら、遠慮する必要なんてないわよね―――)

 一秒にも満たない時間で結論をまとめた不二子は、無愛想極まりない仏頂面を解いた。
 身体ごとグレイに向き直り、両腕を胸元で柔らかく組むと、これまでとは打って変わったような艶然とした笑みを浮かべた。
 不意に漂い出した濃厚な色香のオーラに、グレイの期待感が高まる。
 だが、形の良い不二子の美唇から飛び出した台詞は、痛烈な皮肉と嘲りに満ちていた。

「なぁに、ボク?遊んで欲しいの?」

 本人にとって一番のコンプレックスである極端な短躯。それをあげつらわれたグレイの身体が硬直する。
 数秒後、我に返ったグレイは猛烈な勢いで反芻しようとした。だが、続く不二子の言葉に、今度は半開きの薄い唇が固まった。

「遊んであげてもイイけど?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべた不二子から、一切の悪意は感じられなかった。それが、爆発しそうに膨れ上がっていたグレイの怒りを急速に萎ませる。
 思いもよらぬ不二子の台詞に、開け放した自室のドアの前で、ポカンと口を開けて立ち尽くすグレイ。
 しかし彼は、不二子の“本当の怖さ”を知らなかった。

「ただし―――わたしのルールでね」

 呟くや否や、不二子がグレイへと突進した。
 その勢いは、兎を狩る獅子そのものだ。先程までの笑みは綺麗さっぱり消え失せ、その白い美貌に浮かんでいるのは、触れれば切れるような鋭利さだけだ。
 そんな彼女に凄まじい恐怖を覚えたグレイは、自室のドアに飛び込み、それを閉めようとした。だが、彼のスピードは不二子の半分にも及ばない。
 閉めようとしたドアに不二子の手がかかり、一気に押し開けられた。その勢いに弾かれたグレイの小柄な身体が、室内のカーペットの上に転がる。

―――殺される。

 闇雲な恐怖に駆られたグレイの手が、ジャケットの懐へと伸びた。
 だが、その手がショルダーホルスターから拳銃を引き抜く直前、伸びてきた不二子の手が、グレイの手首をガッチリと掴んだ。

「鳩でも出してくれるのかしら?」

 見上げるとそこに、氷のような微笑を浮かべた不二子の貌があった。
 恐怖のあまり陰茎が縮み上がり、引き攣った喉からは声も出ない。
 その細腕のどこにそんな力があるのか、不二子は手首を掴んだグレイの手を、ジャケットから引きずり出した。

「あらあら。“お子様”がこんな物騒なモノを持ってちゃ危ないわね。
 おねぇさんが預かっててあげるわ」
「ゥガッ!」

 コキリと音を立ててグレイの手首が捻じ曲がり、悲鳴と共に拳銃が落ちた。それをカーペットに到達させることなく、左手だけで器用にキャッチする不二子。

「ふーん、9mmルガーか。
 クラシックなイイ銃だけど、“ボク”には勿体無いわね」

 不二子は手にした銃にチラリと視線を落とし、興味深げに呟いた。だが同時に、ボディコンの裾からその大半が剥き出しの美脚が振り上がり、グレイを痛烈に蹴り飛ばす。
 ギャッという声を上げた不幸な“宇宙人”は、カーペットの上を三回転した末、自室の壁に叩きつけられた。

「こ、殺さないで・・・・・・くれ・・・・・・」

 床にへたり込んだまま、喘ぐように許しを請うグレイ。
 彼は女を床に這わせるのは大好きだが、逆の立場は経験がなかった。
 怒りと恐怖、ショックと激痛が混ざり合い、出てきた言葉は典型的な命乞い、それだけだった。

「趣味の悪い部屋ね。それに臭いし。
 レディーを誘うんなら、掃除くらいしといて欲しかったわ」

 不二子はグレイの哀願を完璧に無視すると、部屋の中央に置かれたソファーに深々と腰掛けた。その長く美しい脚を見せ付けるようにゆっくりと組む。

「でも、このクッションだけは、役に立ちそうね」

 腰掛けたソファーからクッションを取り出す不二子。手にしたルガーの銃口にそれを押し当て、無造作に引き金を引いた。
 バスッというくぐもった銃声と共に、クッションから詰め物の羽毛が舞い上がる。

「ひっ!!」

 グレイの目前のカーペットに、異音と共に大穴が開いた。その衝撃に仰け反った彼の背中が壁にぶつかる。

「ぁ、あ、ああ・・・・・・」

 奇妙な声が上がり、だらしなく開いたグレイの股間に、濃いシミがジワジワと広がっていった。
 恐怖とショックのあまり、失禁したらしい。

「呆れた。今度はお漏らし?
 いくら“お子様”でも、それくらいは我慢してよね」

 そう言ってクスクスと嗤う不二子には、これ以上無いサディスティックな悦びがある。
 彼女は “血”に飢えていた。
 不二子は、この貧相な小男の嗜好が、フィットネスモデルやダンサー、スポーツ選手といった男勝りの精悍さを持つ女であることを知っていた。そんな自分よりも圧倒的に強い女を、部下を使って身動きもできないほどに縛り上げ、ジワジワと陰湿に責め嬲るのが趣味という事実までも。
 端的に言って、不二子が最も嫌悪するタイプの男だ。
 ここ何ヶ月もXを始めとする男たちに責め嬲られ続けた彼女にとり、この小柄で貧相な男は、溜まりに溜った鬱憤と屈辱を晴らす格好の獲物だった。

「さぁ、約束通り遊んであげるわ。
 まずは―――そのビショ濡れのズボンを脱いでもらおうかしら」
「あ・・・・・・え?」
「バカね。何を期待してるの?」

 不二子の切れ長の瞳が悪意一杯に光る。
 彼女は、嫌悪を抱く相手であれば、徹底的に冷血にも冷酷にもなれるのだ。

「あんたはそこで、いつもどおり、汚らしいモノをしごくのよ。自分でね」

 そう冷たく言い放つと、グレイのギョロついた目が限界一杯まで見開かれた。

「そ、そんな・・・・・・」
「死にたい?」

 再び響く、くぐもった銃声。
 ギャッという声で飛び上がったグレイは、滑稽なほどに慌てふためきながら、必死にズボンを脱いだ。
 だが、ズボンと下着の下から現れた“モノ”を目にすると、不二子は形の良い眉をしかめた。

「・・・・・・なにそれ?
 悪趣味にもほどがあるわ」

 彼女の視線の先には、その小さな体には不釣合いなほどの巨大な陰茎―――それも萎びたまま―――が、ブラブラとみっともなく揺れていた。
 それが筋骨豊かな大男に備えられていれば、堂々たる逸物と評せたかもしれない。しかし、痩せこけた貧相極まる男の股間に力なく垂れ下がっているその様は、アンバランスさを通り越して、嫌悪感とグロテスクさのみが鼻に付く。まるで男根そのものが、グレイの体からエネルギーを根こそぎ絞り出し、異常発達したかのようにすら思えてくる。
 しかも、恥蜜焼けした浅黒い亀頭の根元には、明らかに異物を埋め込んでいると判るゴツゴツした陰影が、不気味に浮かび上がっているのだ。
 不二子は、あからさまな溜息をついた。

「・・・・・・まったく。まぁ、いいわ。
 見ててあげるから、さっさと始めなさいな」

 黒光りする銃口で先を促す不二子。
 もはや観念したのか、グレイはコクコク頷くと、自身の震える手で異形の男根を懸命にしごき始めた。
 だが、一分が経ち、二分が経過しても、グロテスクなイボペニスは情けなく萎んだままだった。
 その様子に、不二子が高らかに哄笑した。

「なぁに?あんたが“男”になれるのは、抵抗もできない縛り上げた女の前だけ?
 呆れた。小さいのは体だけじゃなくって、中身まで小さい男ね。
 ホンと、最低」
「ま、待ってくれっ!!も、もうちょっとで・・・・・・」

 セックス奴隷とまで呼んだ女に嘲られる屈辱に、グレイは耳まで真っ赤にしながら、懸命に男根を擦る。
 だが、焦れば焦るほど心身が萎縮し、冷汗が流れ落ちるばかりで勃起に至ることができない。
 不二子は、そんなグレイの様子を目で楽しみながら、更にサディスティックに挑発してやることにした。

「もういいわ。
 あんたがその程度の情けない小物だってことは、よぉーーーく分ったし。
 だ、か、ら・・・・・・ちょっとだけ協力してあげる」

 そう言うなり、ソファーに座った不二子が身体を動かし始めた。
 色っぽく組んだ脚はそのままに、上半身だけをゆっくりと前傾させていく。
 床に両膝をついて懸命な自慰に励むグレイに向かって、身を乗り出す格好だ。
 魚類のそれを思わせるグレイの目が、驚愕に見開かれた。

「どう?これなら少しくらい“男”になれるんじゃない?」

 汗のヴェールで艶かしく濡れ光る巨大な乳房の谷間が、グレイの眼前に晒け出された。
 深いV字カットを描くボディコンの胸元から、押し出されるようにして盛り上がった豊かな白い乳肉は、見事な球形を形作っている。
 恐怖すら束の間忘れ、ゴクリと生唾を呑み込むグレイ。
 それほどまでに、不二子がポーズだけで作り出した巨乳の谷間は圧巻だった。

「まだ足りないの?」

 正直すぎる小男の反応に、不二子は更に気分を良くした。
 “女王”とは、眼前に跪く下僕が従順である限り、それなりに寛大な生き物なのだ。
 白魚のように細く白い指を、V字に切れ込んだボディコンの胸元にあてがい、ゆっくりとズリ下げ始めた。
 僅かな力だけで、タイトなボディコンに押し込められた豊満な熟肉が、自らの弾力と張りによって絞り出されていく。
 もちろん、力加減は絶妙だ。
 ギリギリまで乳房を露出させつつも、バストトップだけは完璧に隠している。
 もはや、グレイに生唾を呑み込む余裕すらなかった。
 その視線は食い入るように不二子の胸の谷間に突き刺さり、血色の悪い小さな手は、狂ったように自らの男根を擦り嬲っている。
 もう命令する必要も銃で脅す必要もなかった。
 本人も気づかぬうちに、真珠入り特大ペニスは極限まで勃起し、力強く天を指していた。
 グレイは荒い息を食い縛った歯と歯の間から漏らしながら、射精に向けて勝手に昇り詰めていった。

「ムッ!ウムゥゥゥッ!!」

 奇妙な喚声が上がった瞬間、グレイの体が反り返り、異形の男根から勢いよく精が飛沫いた。
 どうやら、今日こそは不二子をモノにしようと、溜めに溜め込んでいたらしい。
 ドクドクと音を立てるように大量の白濁液が放たれ、カーペットを汚していく。
 だが、射精の瞬間、快感のあまり手を放したのがまずかった。
 飛び散った白い一滴が、ピンヒールにかかったのだ。

「ちょっと!!なにすんのよっ!!」

 妖然と男の自慰行為を嘲っていた不二子の美貌が、一瞬で夜叉へと転じた。
 恍惚とした表情で未だ射精の余韻に身を委ねているグレイにツカツカと歩み寄り、その無防備な下腹部を思い切り蹴り上げる。

「ウギャッ!!」

 押し潰されたような悲鳴と共にグレイがその場で飛び上がり、そのままドサリと床に落ちた。
 一たまりもなく失神したグレイは、股間をみっともなく曝け出したまま、泡を吹いて痙攣している。
 そんな情けない小男を見下ろし、男のジャケットに汚れたピンヒールを擦り付ける不二子。

「フゥ・・・・・・最低。でも、思ったより楽しめたわ。
 ても、やっぱりあなたとは身体の相性が合わないみたい。
 だから、二度と声なんてかけないで。
 じゃーね」

 艶然と微笑んでそう言い捨てると、不二子は何事もなかったかのような軽い足取りでグレイの部屋を後にした・・・・・・。






『女豹姦獄―本編1へ続く』